川崎重工子会社 川重冷熱が38年間検査不正
データ改ざん等を生みだす企業体質と経営施策に根本的なメスを!


川崎重工は6月7日に、『川重冷熱工業における不適切行為について』をプレス発表し、同日にオンラインで記者会見をしました。また、同日付で不正を把握しながら是正措置を取らなかった川重冷熱社長の解任も発表しました。

神戸新聞はトップ記事で取り上げ、他のマスコミも大きく報道しました。

川重の職場では、「エッ!川重も」「40年前からの不正がなぜわからなかったのか」「新幹線の台車亀裂のときに全社で調査したのではないのか」「不正がわかって今発表って遅くない」等々の驚きや心配、疑問などの声が上がっています。

川重発表の概要と気になる点

発表によると、検査で「不適切行為」が判明したのは、2021年8月に完全子会社とした川重冷熱の空調システム用冷凍機ということで、主な点は以下となっています。

○不適切行為の概要:
(1)出荷前試運転での行為
➀検査成績書類への実測していないデータの記載 【期間】1984~2022 年 【件数】1,950 件
②立会検査時の計測器の不適切な操作 【期間】1984~2022 年 【件数】334 件/上記①1,950 件の内

(2)カタログ・仕様書の不適切な記載 【期間】1986~2009 年 【対象機種】6 機種【現在の稼働台数】2,944 台

いずれも安全性に影響するものではないとしています。

○経緯:
2021年8月末、顧客に提出した検査成績書類と社内試験結果が異なることにアフターサービス部門の担当者が気づいて発覚。2022年3月に、社内調査で不適切行為を概ね把握したとして、親会社である川重に報告があり、その後、川重でヒアリング調査を実施。

○特別調査委員会の設置と今後の対応:
外部の弁護士で構成する特別調査委員会を設置し、徹底した原因究明と是正措置を講じるとともに、川重グループ全体で検査管理体制とコンプライアンスの一層の強化を図り、再発防止に努めるとしています。


川重の発表内容を見ると、職場の声にあったように以下の点が気になります。

経営陣が厳しく問われていること、求められる労働組合の役割について

これまで私たちは、企業は良い製品・サービスを社会に提供し続けることが、社会進歩への貢献であり、一つの社会的責任であることを繰り返し述べてきました(『私たちの職場綱領(私たちはこんな新しい職場をめざしています)』、『2010年代の「川崎重工の経営計画」分析』を参照ください)。

その上で、データ改ざん等の検査不正に対する経営陣の危機意識の希薄さがたいへん危惧されます。

品質の良さは社会的信頼の第一歩であり、品質を保証するデータの改ざんなどはまったくの論外です。とくに製造業大手は、株主だけでなく、そこで働く労働者とその家族、関連企業、地域、自治体などの多くのステークホルダーを抱え、その命運を握っています。したがって、経営陣にはその自覚が厳しく求められます。

2017年秋に、日本の製造業大手の品質不正が相次ぎ発覚したときに、私たちは、その背景にある問題として、以下の3点を指摘しました(2017年「はぐるま」秋季号NO.233)。

第一に、利潤第一主義による低賃金の非正規雇用の拡大や長時間過密労働の放置、下請け単価の引き下げ等々。
第二に、本来、大企業の社会的責任を厳しくチェックすべき公的機関と労働組合が、その役割をきちんと発揮していないこと。
第三に、成果主義や労資一体などで、自由に意見を言える職場風土になっていないこと。

それらに付け加え、製品出荷の最後の砦である品証や検査部門を採算性から軽視し、分社化や人員削減の対象としていることです。

今回の検査不正は、以上に述べたように、一経営者や一部の部門・個人の責任で済まされる問題ではなく、製造業としての持続性を危うくする大問題だということです。

そして、検査不正は表面に現れた一つの症状であり、その是正のために「検査管理体制とコンプライアンスの一層の強化」などの管理強化だけでは、一時的な対策になったとしても問題をさらに深刻にして別の形で現れてくる危険があります。

川重が「社会から信頼され続ける企業」(川重のホームページ)を目指すならば、検査不正を生み出す企業体質と経営施策まで踏み込んだ究明が大前提となりますし、それが信頼回復への第一歩にもなります。
何よりも働く人々が大切にされ、ものづくりの楽しさが実感できる企業風土であれば、このような不正は起きないでしょう。

そして、原因究明に際し、企業のチェック機能としての労働組合の果たすべき役割もきわめて重要です。
経営陣が一部の部門や個人に責任転嫁をさせないためにも、労働組合みずからが職場の声と英知を集め、原因究明に積極的に乗り出すことが求められています。それによって、自由に意見が言えて職場の連帯も強化され、不正を許さない職場・企業づくりになるでしょう。


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(22.06.14)